「来期の方針が決まらない」 「あれもこれもと詰め込みすぎて、結局何がしたいのか分からない」 「美辞麗句を並べただけの『お題目』になってしまっている」
経営企画室やリーダー層の方々から、このような嘆きを耳にすることがあります。
方針(Policy)とは、組織が進むべき「方角」を示す羅針盤の針です。 針がブレていたり、複数の方向を指していたりすれば、船(組織)は迷走し、現場は混乱の極みに達します。
しかし、多くの方針策定会議では、各部門の利害調整や、総花的な妥協案作りが行われています。 「営業部の顔を立てて、この文言を入れよう」 「リスクヘッジのために、この条件も付け加えよう」
そうして出来上がった、分厚い資料と、誰にも覚えられない長ったらしいスローガン。 そこには、誰も熱狂させる力はありません。
優れた方針とは、足し算ではなく、「引き算」から生まれます。 やるべきこと(To Do)を決める以上に、やらないこと(Not To Do)を決める。 無数にある選択肢の中から、たった一つの「センターピン」を見つけ出し、そこに全リソースを集中させる決断。
その決断には、痛みと恐怖が伴います。 だからこそ、安全な会議室では決められないのです。 「捨て去る勇気」を持つためには、余計なものが一切ない、圧倒的な大自然の中に身を置く必要があります。
マグマリゾート。 活火山の噴火口、荒涼とした大地。 ここは、迷いや甘えを焼き尽くし、組織の核(コア)となる方針を結晶化させるための「断捨離の場」です。
「我々の進む道は、これしかない」。 その一点の曇りもない確信を手に入れる旅へ。
本記事では、妥協の産物ではない、組織を貫く一本の槍のような方針を策定するための、マグマリゾート流・方針策定合宿の全貌を、4000文字超の熱量で描き出します。

第1章:カオスの受容。ホワイトボードを捨て、森へ入れ
整然とした会議室の罠
方針策定の初期段階で陥りがちなのが、最初から綺麗にまとめようとしてしまうことです。 「SWOT分析の枠を埋めよう」「ロジックツリーを作ろう」。 フレームワークは思考を整理するには役立ちますが、革新的なアイデアや、現状を打破するような尖った方針は、枠からはみ出した部分(カオス)にこそ潜んでいます。 最初から枠にはめてしまうと、想定内の「つまらない方針」しか出てきません。 まずは、頭の中にある混沌とした悩み、矛盾、野望をすべて吐き出し、拡散させる必要があります。
ワイルド・ストーミング
マグマリゾートでの初日は、会議室を使いません。 森の中を歩きながら、あるいは川辺の岩に座りながら、テーマについて語り合います。
「本当は、今のビジネスモデルに限界を感じているんじゃないか?」 「競合のあの動き、実は脅威だと思っている」 「もっと自由に、こんな馬鹿げたことがやりたい」
PCも議事録もありません。 言葉は風に流され、記録には残らない。 だからこそ、無責任なほどの「妄想」や「悲観」を口にすることができます。
「それ、面白いな!」 「いや、それは違うだろ」
森の複雑な生態系が、脳のシナプスを刺激し、非線形な思考を促します。 一見関係のない事象が繋がり、カオスの中から「何か」が見えてくる。 「まだ言葉にはならないけど、我々が目指すべきは何となくこっちの方角だ」。 この「方向感覚」を身体で掴むこと。 論理的に組み立てる前の、野生の嗅覚による探索(サーチ)。 この泥臭いプロセスを省略しては、力強い方針は生まれません。

第2章:断捨離の儀式。痛みを受け入れる「選択と集中」
「あれもこれも」は「何もやらない」と同じ
拡散させたアイデアを、今度は収束させなければなりません。 ここで多くの組織が失敗します。 「A案もいいし、B案も捨てがたい。じゃあ、両方やろう」。 リソースが有限である以上、これは自殺行為です。 方針策定の本質は、「何を捨てるか」を決めることにあります。 愛着のある事業、長年の慣習、一部の顧客。 それらを切り捨てる痛み(ペイン)に耐え、たった一つの「勝ち筋」に賭ける覚悟が必要です。
ボルケーノ・サクリファイス
「我々のリュックには、これだけの荷物(課題や事業)が入っています。しかし、山頂まで持っていけるのは3つだけです」 活火山を望む丘の上で、比喩的なワークショップを行います。 目の前に並べられた、既存事業や施策を書いた石。
「この重い石(赤字事業)は、ここで置いていくしかない」 「でも、これは創業の精神だぞ!」 「これを持っていては、全員遭難する!」
激しい議論。 守りたいものと、進むべき未来との葛藤。 しかし、登るべき山(ビジョン)が高ければ高いほど、荷物は軽くしなければなりません。
「……決めました。これを置きます」 断腸の思いで、石を手放す。 その瞬間、身体が軽くなるのを感じます。
「残ったのは、この3つだ」。 研ぎ澄まされた選択肢。 物理的な「捨てる」体験を通じて、痛みを受け入れ、前に進む決意を固めます。 「全部やる」という逃げ道を塞ぎ、「これだけは絶対にやり遂げる」という退路を断った集中力(フォーカス)。 マグマリゾートの荒涼とした景色が、その厳しさと潔さを教えてくれます。

第3章:言語の結晶化。スローガンではなく「魂の言葉」を
響かない標語
「お客様第一」「挑戦と創造」。 どこの会社にもあるような、綺麗で当たり障りのない言葉。 これでは、社員の心は動きませんし、行動指針にもなりません。 方針とは、迷った時の判断基準となる具体的で鋭利な言葉でなければなりません。 それは、コピーライターが考えた気の利いたフレーズではなく、自分たちの内臓から絞り出したような「生身の言葉」であるべきです。
ボンファイア・ワーディング
夜、焚き火を囲みながら、昼間に決めた方向性を「言葉」に落とし込みます。 炎を見つめながら、一語一句、吟味する。
「『挑戦』じゃ弱いな。もっと泥臭いニュアンスだ」 「『戦う』? いや、『楽しむ』? どっちだ?」
辞書的な意味ではなく、自分たちの文脈(コンテキスト)における意味を問う。
「俺たちが本当に言いたいのは、失敗してもいいからバットを振れってことだろ?」 「じゃあ、『空振りを称えろ』はどうだ?」
「それだ!」 その瞬間、空気が変わります。 ありきたりな言葉が、独自の意味を帯びた「魔力のある言葉」に変わる。
「『空振りを称えろ』。これなら、新人も萎縮せずに動ける」 「評価制度も、これに合わせて変えなきゃな」
言葉が決まれば、行動が決まる。 焚き火の熱気の中で鋳造された言葉は、冷めても硬度を失いません。 それは、マニュアルに書かれた文字ではなく、組織のDNAに刻まれる「掟(コード)」となります。

第4章:シミュレーション。その方針で「戦える」か?
机上の空論を野戦で試す
「『空振りを称えろ』という方針に決まりました」。 言葉は決まりましたが、それが実際の現場で機能するかどうかは別問題です。 「本当に大失敗しても許されるのか?」「上司は口先だけじゃないか?」。 現場の疑念を払拭し、方針の実効性を確かめるには、安全な会議室を出て、リスクのある環境でテストドライブ(試運転)をする必要があります。
ワイルド・シナリオ・ゲーム
翌日、フィールドアスレチックやサバイバルゲームを使って、新方針を運用してみます。 「今回のミッションにおける方針は『空振りを称えろ』です。失敗を恐れず、大胆なルートを選んでください」
しかし、実際に誰かが失敗して、チームが泥だらけになる。 その時、リーダーはどう反応するか?
「おい! 何やってるんだ!」と怒鳴れば、方針は嘘になります。 「ナイス空振り! 次、行こう!」と笑い飛ばせるか。
身体的なプレッシャーがかかる場面での言動一致。 「あ、本気なんだ」。 「この方針通りに動いても、本当に大丈夫なんだ」。
メンバーが肌で納得する瞬間。 逆に、方針の欠陥が見つかることもあります。 「やっぱり、最低限のルールは必要だね」。 現場のフィードバック(身体反応)を受けて、方針を微修正(チューニング)する。 このプロセスを経ることで、方針は「壁に貼られるお題目」から「使える武器」へと進化します。

第5章:全社への布告。トップの覚悟を「背中」で語る
メール一本での通達
「来期の方針が決まりました。添付ファイルを確認してください」。 これほど熱意のない伝え方はありません。 方針とは、トップから全社員への「約束」であり「檄(げき)」です。 どのような表情で、どのような声で、どのような場所で語られるか。 その非言語情報(ノンバーバル・コミュニケーション)こそが、メッセージの信頼性を決定づけます。
サンライズ・プロクラメーション(布告)
合宿の最後、日の出と共に。 活火山を背負ったトップが、参加メンバー(リーダー層)に向かって、最終決定した方針を宣言します。
原稿は読みません。 自分の腹に落ちた言葉を、自分の声で届ける。
「我々は、来期、『空振りを称えろ』を掲げる!」 「痛みも伴うだろう。しかし、その先にしか未来はない!」
逆光の中、輝くシルエット。 風に煽られる声。 その神々しさと迫力。
聞いているリーダーたちは、その姿を脳裏に焼き付けます。 「社長がここまで本気なら、俺たちもやるしかない」。 「この熱を、そのまま現場に持ち帰ろう」。
ここで撮影された映像や写真は、全社キックオフでのオープニングムービーになります。 会議室で撮った動画とは、説得力が違います。 「本気度」が映像から滲み出ているからです。 方針策定合宿は、単に言葉を決めるだけでなく、その言葉を全社に浸透させるための「物語の起点」を作る場でもあるのです。

まとめ:方針とは、未来への「一点突破」である
資源の分散は、敗北への道です。 資源の集中こそが、戦略の要諦です。
しかし、集中するためには、多くのものを捨てる勇気が必要です。 その勇気は、日常の延長線上ではなかなか湧いてきません。
マグマリゾートでの方針策定合宿は、迷いを断ち切り、退路を断ち、組織の全エネルギーを一点に注ぎ込むための儀式です。
「あの日、あの山で決めたから、今の我々がある」 「あの方針が、迷える我々を救ってくれた」
数年後、組織の歴史を振り返った時に、ターニングポイントとして語られる瞬間を。 曖昧さを許さない、クリスタルのように透明で硬い方針を。
覚悟を決めたリーダーたちを、マグマリゾートはお待ちしております。